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大切な人の死――それは、考えただけでも恐ろしいできごとです。しかし、死別は誰もが経験する可能性があり、先立つほうは、遺族に健康で幸せな生活を送ってほしいと望むもの。今回は、遺族の健康リスクを評価した研究をご紹介します。重いテーマですが、健康リスクの理解を深めて生活に役立てるのもまたサイエンスではないでしょうか。
「大切な人の死」についての調査
この研究は、大切な人の死による悲しみが心臓発作を引き起こすリスクを明らかにする目的で、ハーバード大学の研究者が中心になって行いました。
彼らは、数十の医療機関を回り、心臓発作を起こしてから4日以内の患者、約2,000人にインタビューをしています。
患者の平均年齢は61.6歳でした。この調査では、「大切な人」とは配偶者だけではなく、親戚や親友も含めています。
研究者たちは、その患者に直接会い、1年以内に大切な人の死の知らせを聞いたことがあるかを質問しました。
そして1年以内に大切な人の死の知らせを聞いた方には、心臓発作を起こす前の1年間の健康状態と、亡くなった方の大切さについて「わずかに」「適度に」「非常に」の3段階から選んでもらい、その報告を聞いてから心臓発作を起こすまでどのくらい期間があったか尋ねたのです。
死別により心臓発作リスクが上がる
インタビュー調査の結果、約2,000人の患者のうち、270人(全体の約14%)が6か月以内に少なくとも1人の大切な人の死の報告を聞いていたことがわかりました。
そのうち19人が1日以内に、7人が1~2日以内に、5人が2~3日以内に、21人が4~7日以内に、大切な人の死の報告を聞いていました。
また、1日以内と回答した患者のうち、その方の大切さは「適度に」「非常に」と回答した方が過半数を占めていました。
このインタビュー調査の結果から、大切な人の死の報告を聞いてから1日以内の心臓発作リスクは報告を聞く前より平均で21倍、1週間以内の心臓発作リスクは6倍になると研究者たちは述べています。
同時に、このリスクは時間の経過とともに減少していることも明らかにしました。
また、大切な人との死別は心臓発作の他にも、患者の鬱病、睡眠時間の減少、食欲の低下、ストレスホルモンの増加、心臓の機能に影響するタンパク質の低下と関連するかもしれないと述べています。
リスクを乗り越え、明日を生きるために
悲痛な気持ちを表す言葉には「胸が張り裂ける」「胸が痛む」など、「胸」に関連した表現が昔から用いられます。
この研究結果は、強い悲しみは実際に心だけでなくからだにも影響する可能性が高まることを、科学的に明らかにしました。
研究者たちは、今回の研究結果から、大切な人の死の報告が、心臓発作の最大のリスクになる可能性があると述べています。
また、この他のさまざまな研究例から、強い悲しみによるストレスを経験した人は、心拍数や血圧が上がる、または血栓ができる可能性が増加するという報告もされています。
これらはいずれも心臓発作の原因となりうることに注目すべきでしょう。
心臓発作の症状には、胸部の不快感、上半身や胃の痛み、息切れ、冷や汗、吐き気、立ちくらみなどがあります。
これらの症状を経験したら、医師の診断や治療など適切な対処をするべきではないでしょうか。
先立った方は、遺族が強い悲しみで健康を害してしまう姿を決して望んでいないはず。
先立った方のためにも、科学的な知識でリスクを避けていきましょう。。
また、不幸にも発作に見舞われた方には、適切な治療を受けて1日も早く健康で元気な生活を取り戻してほしいと思います。(文・黒澤 勝彦)
<参考文献>
1) Mostofsky, E. et al., Risk of Acute Myocardial Infarction after Death of a Significant Person in One's Life: The Determinants of MI Onset Study, Circulation, 125(3) (2012)