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ウイルスや細菌など、からだの中に侵入した「抗原」を退治する「抗体」を人工的につくること。その目標に向かって、毎日ワクワクしながら研究に取り組む研究者がいました。現在は九州大学で助教を務める、星野友さんです。
2011年12月、ついに人工抗体がつくられたというニュースが流れました。
安価で扱いやすい「抗体医薬品」を
抗体医薬品とは、抗体が病原体や異物などの抗原を認識するしくみを利用した医薬品のことです。特定の細胞や組織(物質や分子)にだけ効果がある抗体を用いています。
抗体医薬品は、病気の原因や異物であること示す目印になっている特定の「抗原タンパク質」をピンポイントでねらい撃ちするため、副作用が少なく、治療効果が高いといわれています。
そのため、がんやリウマチなどにおいては、特効薬になることが期待されているのです。
しかし、高価なうえ、分解されやすいために扱いが難しいという課題を抱えていました。
化学で生体物質をつくる、という挑戦
「だめならだめでいい、でも誰も成功していないからやろう」。
それが、星野さんを研究に掻き立てるモチベーションです。人工的に抗体をつくることはまだ誰も成功していませんでした。
それまでの研究で、化学物質を合成して人工的に抗体に似たかたちをつくることができるようにはなっていました。
合成するときに抗原の「型」を混ぜておき、合成が終わった後にそれを取り除くと、抗原にぴったりと結合する化学物質をつくることができるのです。
しかし、作成した「抗体に似た化学物質」が実際に働くかどうかを調べる技術がありませんでした。
そんな状況を解決に導いたのは、全くの異分野を専門にしていた星野さんだったのです。
「研究に行き詰まったとき、異分野に目を向けると新たな可能性が生まれることがある」と話します。
異分野との融合で生まれた人工抗体
「研究を進めて行くうえで、上手くいかないことがたくさん出てくると思う。けれど、それを恐れずに 壁を乗り越えていく覚悟はできています」。
そう話していた星野さんは、昨年、ついに大きな壁を乗り越えました。
カリフォルニア大学、静岡県立大学、スタンフォード大学の研究者と共同で、安価なプラスチック原料のみから合成した微粒子が、抗体と同じように、体内で毒素を無毒化することができることを示したのです。
その抗体の大きさは、数百ナノメートル。
原料の配合比を最適化することにより、動物体内でもっともよく働くようにしたり、副作用を抑えたりできるように、その方法の設計も行われました。
このプラスチック抗体は、低コストでつくることができ、壊れにくいため、次世代の医薬品として活躍することが期待できます。
自分にしかできない、次のステップへ
人工抗体作成は、星野さんの抱く野望のファーストステップだそう。
目指すのは、生命が長い進化の過程でつくり出した生体物質と同じ働きを持つ化学物質を、人の手でつくり出し、利用できるかたちにすること。
「化学の力で酵素や抗体を大量につくれるようになれば、多くの人がその恩恵を受けるようになる。そんなふうに自分の研究が世の中の役に立ってほしい」と星野さんは願っています。
(文/再構成・磯貝 里子)
※『someone』2007夏号掲載の星野友さんインタビュー記事「化学の力で生命を模倣する」に九州大学プレスリリースの情報を追加し、再構成しました。
<参考文献>
1) 九州大学プレスリリース 安価なプラスチック抗体で血液中の毒素の無毒化に成功
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2011/2011_12_22.pdf