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先日、がんの予防・治療などに力を入れている人間ドックの国際会議へ参加するため、台湾を訪れました。現在行われている治療法では、副作用など患者負担が大きいことが知られています。そのため、がん克服は不可能ではないが苦難の道と考えられますが、ここ台湾の学会にて、ビタミンCのがん治療が有効という朗報を聞きました。

学会にて発表する筆者。日本人の生活習慣と身体の老化度の関係について発表しました。
ビタミンCはがんに効く?
その報告者であるアメリカの研究者は、ビタミンCをさまざまな病気の治療に利用することを他の国にも推奨し、アメリカにおけるいくつかの事例を報告しました。その中でも特に注目すべきは、「50~100gのビタミンCを1~2時間で点滴することががんの治療に有効であったこと」であると彼は言いました。確かにビタミンCは普段食べ物からでも摂取しており、私たちの身体にとってそれほど違和感のないものですが、その量が気になった私は、臨床医の先生にその旨をそっと尋ねてみました。先生曰く、「通常、推奨される1日当たりのビタミンC量摂取量は100mg程度であるが、ビタミンCは代謝が早く体内で副作用がもたらされることはあまり考えられない」とのことでした。一方、「日本の病院では大量のビタミンCを入手する習慣はほとんどなく、入手ルートも確立されていないため現実的でない。また、急を要するがんの治療ならともかく、他の病気に関してはもっと実績を上げてから報告した方がよいのではないか」と辛口の意見でした。
秘密兵器の過酸化水素を産み出し、がん細胞を攻める
アメリカの研究者の報告は続きます。彼は、高濃度のビタミンCががん細胞を殺す理由を次のように話しました。「ビタミンCは、体内でアスコルビン酸ラジカルとなる。ラジカルとは激しいという意味で、周囲のものと反応しやすくなるため、『フェントン反応』という特殊な化学反応を経て、過酸化水素という体内で最も凶暴で攻撃的な分子のひとつが生成しがんを殺す」。しかし、私は、このような凶暴な過酸化水素は、体内の他のものにまで害を与えるため、私たちの身体にとっては手に負えずやっかいなものではないかと気になりました。そこで、今度は栄養の女性研究者に聞いてみました。
がん細胞を「飢死」させる作戦
「正常な細胞は、細胞内にカタラーゼという酵素を持ち、過酸化水素を水と酸素に分解するため、攻撃にさらされることなく事なきを得ている。ところが、がん細胞には正常細胞の数分の1しかカタラーゼができないので、過酸化水素を十分に分解できず、駆逐されてしまう」。これは発表者と女性研究者との共通の見解でした。がん細胞とは、通常の細胞が異常になったものの総称で、本来持っているはずの過酸化水素への対策まで弱まってしまうのです。
ところが、先ほどの臨床医の先生は別の見解を示しました。「もうひとつ考えられることは、ビタミンCとは、じつは糖質と非常に似た構造を持っているため、糖質の大好きながん細胞は、ビタミンCを糖質と勘違いして食べてしまう。従って、がん細胞は糖質からエネルギーをつくれずに死んでしまうのだ」とのことでした。なるほど、糖質からエネルギーはつくられますが、ビタミンCからはつくられませんね。まさに、がん細胞は餓死してしまうのです。
がん細胞の弱点を突くことが効果的
どちらの意見が正しいかはまだわかりませんが、いずれにしてもビタミンCをがんの治療に利用できる可能性があることには変わりないでしょう。既存の手術、放射線、抗がん剤によるがん治療が、がんという強敵との正面衝突とするならば、ビタミンC点滴療法は、がんの弱点を突く頭脳的な作戦に思え、今回の発表が聞けたことは、非常に有意義でした。なぜなら、医学の最先端では、私たち人類の宿敵と闘い続けている頭脳明晰な研究者たちがいることがわかり、とても頼もしく思え、私自身もそのような研究者を目指そうと強く思えたからです。
後記
学会会場を出て台湾の街中を歩くと、いたる所に熱帯果物のお店が並んでいました。そのうちの多くは果物を切り売りしてその場で食べさせてくれる屋台や、果汁をミックスさせたお茶の店でした。疫学研究結果によると、がんのリスクを減少させる食べ物の上位を占めるのが、野菜や果物です。しかし、台湾のように新鮮な果物が安くて手軽に手に入る環境にいれば、がんを気にせずともついつい食べたくなってしまうものですよ。
(文・埜本 慶太郎)


写真は台湾の首都台北市内で見つけた熱帯果実の店とお茶の店。
市内には、こういうお店がたくさんありました。
<参考文献>
1) 第3回国際人間ドック会議抄録集
2) Qi Chen, et al, Pharmacologic doses of ascorbate act as a prooxidant and decrease growth of aggressive tumor xenografts in mice, Proc Natl Acad Sci U S A. Aug 12;105(32):11105-9 (2008)
3) World Cancer Research Fund and American Institute for Cancer Research: Food, Nutrition and the Prevention of Cancer: a global perspective, pp.436-446 (1997)