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沖縄島から約460km離れた日本の南端に位置する、西表島。今から約20万年前に大陸から離れたこの島には、独自の進化を続けてきた生き物が多く生息しています。
イリオモテヤマネコもその一種。普通のネコよりからだがひと回り大きく、太く長い尾とがっしりした四肢が特徴です。水を嫌うことなく川を泳いで渡ることもできるそうです。約100頭が西表島に生息しており、1965年に発見されてから、無人カメラや電波発信機を用いた行動追跡やフンの内容分析などの地道なフィールド調査が続けられてきました。しかし、子どもを産む時期や寿命などについてはいまだほとんど知られておらず、研究者の間では最大の謎となっていました。そんななか、琉球大学の伊澤雅子さん率いる研究グループは、世界で初めてイリオモテヤマネコの歯を用いた年齢判定法を確立したのです。
動物の歯は、肉食か草食かなどの食性を表すと同時に、犬歯の削れ具合から年齢を予測することができます。また、クマのように冬眠する動物では、エサを摂取しない冬の時期になると、歯のセメント質が石灰化し、周期的な層ができることが知られています。しかし、西表島のような亜熱帯 気候では、冬眠する必要がないために層は形成さ れないと考えられていました。伊澤さんたちは、 そんな誰も見向きしなかったイリオモテヤマネコ の歯を観察したところ、冬眠する動物と同様の層を発見したのです。これと犬歯の摩耗(すり減り方)による測定方法と併せることで、正確に年齢が判定できるようになりました。
この発見は、イリオモテヤマネコの生態を解明するための新たな一歩となるでしょう。とはいえ、彼らについて知られていることは、まだごくわずか。今後、このような新しい観点での調査が増えてくるかもしれません。
西表島のように人間の影響が少ない孤島には、小さな集団で独自の生活を営んでいる生き物がたくさんいます。これら生き物の生態研究には、彼らが暮らせる環境を守ることという大きな使命もあります。環境問題を考えるとき、日本にもこんな不思議な生き物が暮らす島々かがあることを思い出してください。(文・福田裕士)
取材協力:琉球大学 伊澤雅子さん
(someone vol.15より転載)