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沙漠だって緑になれる! 沙漠植林のすゝめ

  • (2011/11/04)
  • カテゴリー: General

沙漠ってみなさん、どんなイメージですか? 砂の丘が続いていて、ラクダが歩いていて、ほとんど人が住めなくて、水がなくて木も草もない……。いろいろなイメージがあると思いますが、全部正解です。じつは、沙漠っていろんな種類があって、中には工夫次第で木を植えることや、大きく育てた木の有効活用が期待されている場所もあるのです。今回は、そんな沙漠の植林についてご紹介します。


岩石のようにカッチカチ
沙漠というと、砂の丘が延々と広がる光景を思い浮かべると思いますが、中にはカッチカチに固まっている地面が広がっている沙漠だってあるんです。西オーストラリア州内陸地の沙漠もそのひとつで、薄い砂の下に岩石のように固い「ハードパン」と呼ばれる層が広がっています。このハードパンの正体は「ラテライト」と呼ばれる土壌が固まったもので、一度水に濡れてから強い太陽光に当たって乾燥すると、カッチカチに固まる性質があります。インドではこの固まったラテライトを金属の刃物で切り出して、レンガとして使用している地方があるくらいです。強い太陽光や風による風化作用でできた細かい鉱物粒子が砂粒の間に入り込んで、接着剤のように砂の粒子をくっつけてしまうのです。西オーストラリア州では、このハードパンが広さ300,000 km2もの広大な土地に広がっています。ハードパンは一度固まると濡れても元に戻らないどころか、たまに降る雨水すら染み込んでいかなくなってしまい、固すぎて樹木も根を延ばすことができません。
しかし逆に考えると、一度ハードパンの中に根を伸ばすことさえできれば、木は固い地面にがっちりと根付くことができるわけです。また、砂ばかりの沙漠では、せっかく植えた木が風に飛ばされた砂で埋まって植林が失敗してしまった例もありますが、ハードパンの広がる沙漠では砂が少ないのでこうした心配もありません。そこで、植林をしたい場所だけハードパンを緩める技術が必要となります。

ハードパン破砕法
1998年、工学・農学の研究者たちが集まって、温室効果ガス(CO2)の吸収・固定を目的に「乾燥地植林による炭素固定システムの構築」プロジェクトがスタートしました。ここでは、このハードパンにドリルで穴を空けて火薬で爆破し(図1)、固まっていたラテライトを緩めてから植林する方法をとりました。ここのハードパンは世界でもトップクラスの固さだと事前調査で判明したので、爆破というダイナミックな手法が採用されたのです。こうすることで植林した木は根を伸ばすことができ、降った雨も染み込んで木が根から吸うことができるようになります。
また、この土地の年間平均降水量はわずか200 mm(日本は800~2,500 mm)と非常に少ないので、この植林地では外部の約2倍の面積の土地から降った雨が流れてくるように地形を造成してあります。その結果、わずかな灌木しかなかった土地を森に変えることができました(図2)。この方法で植えた木の一部は高さ十数メートルにまで成長しており、成長し続ける木の研究が現在も続けられています。

    
図1 2007年のハードパン破砕実験(筆者撮影)

    
図2 2008年の植林地の様子(筆者撮影)

この研究は約10年続いていますが、最初から認められていたわけではありませんでした。研究代表者は、スタート時に著名な先生から「植えても木が育つわけがない!」と言われて大論争になったのだとか。しかし成果を積み重ねることで徐々に認められるようになり、昨年、代表者が学会賞を受賞して学界全体から認められたかたちになりました。10年越しで学界全体から認められたということで、研究代表者の喜びもひとしおだったろうと思います。

沙漠植林研究のこれから
成長した木はどう利用されるのでしょう? 現在考えられているのは、バイオマス燃料の原料にすることです。すでにこの沙漠で伐採した木をバイオマス燃料に変えて日本に輸送するには、どういうシナリオなら伐採や輸送で排出される二酸化炭素量が少なくなるか試算されています。東日本大震災で電気をはじめとするエネルギーのありかたが見直されているなか、農業に使用できない沙漠でエネルギー生産ができれば、こんな有効活用はないのではないでしょうか。(文・黒澤 勝彦)


<参考文献>
1) 高橋 伸英.西オーストラリア州の概要.沙漠を森に –温暖化への処方箋–,pp. 25-27.コロナ社(2011)
2) 高橋 伸英.ハードパン破砕技術.沙漠を森に –温暖化への処方箋–,pp. 104-112.コロナ社(2011)
3) 小島 紀徳.乾燥地の工学的利用と大規模植林による炭素固定.2009年度学会賞受賞者記念講演.日本沙漠学会 第21回学術大会講演要旨集(2010)
4) Kojima. T et al., Life Cycle Assessment of Fuel Production for Biomass from Dry Land Afforestation. CD-ROM of Proceedings of International Conference on Environment 2010, Parkroyal Hotel, Penang, 2011.11.13-15 (2010)

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