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普段、生き物は外部から栄養を取って生きています。たとえば動物は動き回ってエサを取っているし、人間も料理をしてご飯を食べていますよね?
植物も空気中の二酸化炭素(CO2)を使って光合成をしたり、根で外部から栄養分を吸収したりしています。ですが、動物と違って動くことができません。それでは周りに栄養分が不足したとき、いったいどのように対応しているのでしょうか?
今回から2週にわたって、植物の生き残り戦略を紹介していきたいと思います。
植物の生存に必要な栄養素
植物の生存にとって必要な栄養としては、C(炭素)、N(窒素)、P(リン)、K(カリウム)、Mg(マグネシウム)などが知られています。
今回は、CとNに注目しましょう。CとNは、植物自身のからだをつくるタンパク質の原料になったり、生きるためのエネルギーになったりする、特に重要な元素です。
そのため、体内において常に適切なバランスが保たれている必要があります。
この適切なバランス(C/Nバランス)は、植物種によってバラバラですが、大学などで植物を育てて行う実験では、スクロース(C源):硝酸カリウム+硝酸アンモニウム(N源)≒2:1(モル濃度比)が適切な条件として使用されています。
自然界では、空気中のCO2からCを、地中からNを吸収していますが、空気中のCO2濃度は大きく変化しないので、植物体内のC/Nバランスは地中の利用可能なNの量に依存します。
このバランスが崩れたときは、もとに戻すことが必要ですね。
植物はどのようにしているのでしょうか?

C/Nバランスを保つためには?
実は、植物の細胞内に、このバランスを保つためのカギとなる物質が存在しています。
それが2-oxoglutarate(2-OG)という物質です。この物質は、呼吸によって体内の糖(C)からエネルギーを生み出すTCAサイクルという過程でできる副産物であり、アミノ酸合成に利用されます。TCAサイクルは体内のCの代謝系ですし、アミノ酸合成はNの代謝系のひとつです。つまり、2-OGはCとN両方の代謝に関わる重要な物質であるため、その量の増減がC/Nバランス応答のカギとなるのです。
細胞内においてCが少なくNが多い状態(C<N)のとき、TCAサイクルによって合成される2-OGの量は減少します。すると、これがスイッチとなり、遺伝子発現や代謝が大きく変化し始めます。具体的には、2-OGを増やすために糖代謝が活性化します。体内のCで足りない場合には、より多くのCを空気中から獲得しなければならないので、C同化が活性化されます。
つまり、より光合成を行う必要があるので、クロロフィル合成酵素などの発現が増加し、地上部の光合成組織の生長が促進されます。さらに、Nの吸収量を抑制するために、N同化・アミノ酸合成に関連する遺伝子の発現が低下するなどして、根の生育が抑制されます。最終的に、地上部が大きく地下部は貧弱になります。
逆にCが多くてNが不足している場合はどうなるでしょうか?細胞内では2-OG量が増加します。それがスイッチとなり、今度はクロロフィル合成酵素などの発現が低下し、N同化・アミノ酸合成に関連する遺伝子の発現が促進されます。そして、根は地中からNを吸収しようと盛んに生長し、地上部の生育は抑制されてしまうのです。

動くことのできない植物は、このように周りに栄養分に応じてからだのかたちを変えてバランス調節をしているのですね。
C/Nバランス応答のしくみがわかると?
実はこのような複数の栄養バランスに関わる応答の研究は始まったばかりです。
今回解説したC/Nバランス応答は解明が進んでいますが、最初にお話ししたように、栄養素はCとNだけではありません。他のさまざまな栄養のバランス応答機構を解明することができれば、肥料や農薬の開発に役立つでしょう。
それにより、栄養が偏った土地でもたくさん収穫できる作物をつくることができるようになるかもしれませんね。
次回は、さらに過酷な栄養条件下で植物が編み出した「子孫を残すための工夫」にせまりたいと思います。お楽しみに!