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こんにちは。
今週からのリバコミは特集「ノーベル賞受賞者の素顔」を取り上げていきます。
科学技術の進歩は目覚ましく、数々の発明、発見の成果が私たちの生活の中に浸透しています。しかし、今私たちが恩恵を受けている科学技術の裏に多くの研究者の努力や、ひらめき、驚愕の事実感動のドラマがあったことを知る人は少ないでしょう。
研究者たちは研究を続ける中でどんな視点で科学と向き合ってきたのか。
科学の歴史を塗り替えるような大発見をした研究者に贈られ、科学で一番の権威とも言われるノーベル賞受賞者にフォーカスを当てて研究者の知られざるエピソードをご紹介したいと思います。
第一回目は日本人で唯一、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進さんに焦点を当ててみました。
利根川進さんの大発見!!
利根川さんは、1987年に「多様な抗体遺伝子が体内で再構成される理論を実証した」という理由でノーベル賞生理学・医学賞を受賞しました。
無数に存在する病原菌に対して体を守ってくれている「抗体」というタンパク質が、どのように作られるのかを解明した方です。
抗体は血液やリンパ液の中にあり、私たちのからだに感染した病原体にくっついて、悪さをするのを防いでくれます。1種類の病原体につき1種類の抗体 が対応しているのですが、私たちが持つ遺伝子の数には限りがあります(最新の研究成果では22,000〜23,000程度)。
どうやって無限ともいえるほ ど数多く存在する病原体にどのように対応しているのか、研究者の間でふしぎに思われてきました。
利根川さんは、この神秘を解明する研究を行ったのです。
利根川さんは、抗体の遺伝子が「複数の遺伝子の部品を組み合わせて作られる」ことを明らかにし、その組み合わせを変えることで数多くの抗体タンパク 質が生まれることを証明しました。
たとえば2種類の部品がそれぞれ10通りずつあったとしたら、部品総数は10+10=20個でも、組み合わせは 10×10=100通りになりますよね。
実際には、Y字型をした抗体の中で、病原体にくっつく先端部分が遺伝子の組み合わせによって変わるようになっています。この部分は重いH鎖 (Heavy chain)、軽いL鎖(Light chain)という2本の鎖からできており、さらにL鎖は2種類に分かれます。それぞれH鎖にはV領域(約65個の部品)、D領域(約27個)、J領域 (6個)、L鎖にはV領域(30個または40個)、J領域(4個または5個)と呼ばれる部分があり、それぞれの部品の種類数をかけあわせていくと数百万種 類の抗体を作れることになります。
さらに、部品のつなぎめ部分で遺伝子が欠けたり、または部品に突然変異が入ることで、最終的に1億種類以上の抗体を作ることができるのです。
この抗体の多様性のしくみを解明した成果が認められて、利根川さんは1987年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
さらに選考委員のひとりに、「この業績は百年に一度の大発見」と言わしめたそうです。
通常、遺伝子は長い月日をかけ、親から子へと受け継がれる過程で変化していく。そうして生物は進化してきたという考えが、当時ありました。
しかし抗体を作る遺伝子だけは、生物の一生の中で大きく変化しています。
従来の常識を覆すこの発見に、おそらく選考委員は感動したのでしょう。
利根川進さんってどんな人?
世紀の大発見をした利根川さん。医学・生理学賞を受賞したので、もともと医学系や生物系を学んでいた人なのかと思いきや、実は京都大学理学部の化学科に在籍していました。彼はもともと化学にとても興味を持っていたのです。
では、なぜ生命現象の解明を行い、ノーベル賞を受賞したのでしょう。そこにはこんな話がありました。
彼が大学4年生の時、卒業研究で所属していた研究室の先輩から、アメリカで「分子生物学」という学問分野が盛り上がっているという話をたまたま聞きました。
分子生物学とは,
生命現象を「分子同士の化学反応」だと捉えて、そのしくみを調べる分野です。当時アメリカで遺伝子情報とタンパク質構造との関係が明らかにされ、まさに発展しつつある状況でした。
そして、遺伝子の働きがどのように制御されているかについても徐々に解明が進んでおり、彼も「自分がこの分野を発展させ、遺伝子の基本的な制御機構を解明したい」と思ったそうです。
しかし、当時の日本では分子生物学がまだなじみがなく、研究がおこなわれている機関、大学も少数しかない状態でした。
分子生物学を学びたいと考えていたとき、大学院の指導教官だった京都大学ウイルス研究所の渡辺格教授に、こう言われたそうです。
「分子生物学を学びたいなら、アメリカへ行きなさい」
今では学生が海外へ留学することはそこまで珍しいことではありませんが、1960年代には、日本人が外国へ行くことに対して規制がかけられていまし た。そのような社会情勢の中、これは大きなチャンスだと思った利根川さんは、渡辺教授が紹介してくれたカリフォルニア大学サンディエゴへ留学し、分子生物 学を学んで博士号を取得しました。
レッツチャレンジ!!
利根川さんはもともと化学の分野を勉強してきた人でした。しかし、それよりもおもしろい!と思える分子生物学に出会ってから、そちらへの探求心がわいてきました。そして、化学から生物学へと異なる分野の世界へ恐れずチャレンジし、そこで見事に成功を収めました。
そして現在は、人間らしさとは何か、ということに興味を持ち、アメリカで脳について研究しています。
自分のやりたいこと、興味を持っていることをとことんやる姿勢には憧れます。
皆さんも特定の分野にとらわれず、自分の興味が持てるものに向かってチャレンジしていきましょう!!
(北里大学 理学部 加藤知弘)
【参考文献】
『あなたも狙え!ノーベル賞』 著者 石田寅夫 化学同人
『ノーベル賞の100年』 著者 馬場錬成 中公新書
『生化学キーノート』 著者 B.D.Hames N.MHooper 訳:田之倉優、村松知成、阿久津秀雄
http://www.cdb.riken.jp/jp/millennium/fig/fig13_01.html
https://database.riken.jp/sw/data/ja/cria42s2ria42s55i/