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りょうこ博士のかがくじゃーなるくらぶ!ってなに?

わたしはどこにいるのか?空間認知の発達 part1


こんにちは!りょうこ博士です。


 


かがくじゃーなるくらぶ、今週も始めます!


 


部員の皆さん、世界最先端で最新の面白い論文を一緒に読んでいきましょう。


 


皆さんもそろそろ最新の科学論文に慣れてきた(?)のではないでしょうか?


ということで今回から、まず皆さんそれぞれが英文を読んでみてから、その後で一緒に論文の内容を勉強していくことにしましょう!


 


 


今週は、まず最新の科学論文の英語のタイトルや概要をご紹介します。


と同時に、選んだ論文の内容を理解するための、キーワードをいくつかピックアップします。


部員の皆さんは、その内容について各自調べてみてください。


 


そして次の週に、そのキーワードの解説をもとに論文全体の内容をご紹介していきたいと思います。


それでは早速始めましょう!


 


 


今回は


6月18日号の 『Science』 に掲載された論文です。


 


タイトル: Development of the Hippocampal Cognitive Map in Preweanling Rats


著者: Tom J. Wills, Francesca Cacucci, Neil Burgess,John O'Keefe


概要: Orienting in large-scale space depends on the interaction of environmental experience and preconfigured, possibly innate, constructs. Place, head-direction, and grid cells in the hippocampal formation provide allocentric representations of space. Here we show how these cognitive representations emerge and develop as rat pups first begin to explore their environment. Directional, locational, and rhythmic organization of firing are present during initial exploration, including adultlike directional firing. The stability and precision of place cell firing continue to develop throughout juvenility. Stable grid cell firing appears later but matures rapidly to adult levels. Our results demonstrate the presence of three neuronal representations of space before extensive experience and show how they develop with age.


 


 


 


今週は、ラットの脳の発達に関する論文を選んでみました。


 


私たちヒトの脳の進化の過程で、最も遅れて発達した部位が「大脳」だと言われています。


この大脳の中の側頭葉の内側にある、記憶の中枢とも言われるのが「海馬 (hippocampus) 」で、今回の論文で注目している部分です。


 


ヒトは、海馬に障害を受けると記憶に重大な障害が見られるようになることから、海馬は記憶に関わる重要な機能を果たしているといわれています。


 


しかし、海馬は記憶だけでなく、空間認知にも重要であるのを知っていますか?


空間認知とは、空間にある対象の位置を認識することです。


 


例えば、ある部屋に入った時に、私達はその部屋の大きさや形などを認識し、窓がどの方向にあるのか、自分がこの部屋のどの位置にいるのかを一瞬で把握することができます。


この空間認知力が高い人は、逆立ちをしていても寝っ転がっているときにも瞬時に自分の位置や向いている方向を把握できるため、例えばアクロバット飛行をするパイロットなどに必要となる能力を持っていると言えるかもしれませんね。


 


 


この能力は、生まれる前から備わっているものなのでしょうか?それとも、成長する過程で、鍛えられるものなのでしょうか?


 


今回の論文では、生まれたばかりのラットを使って海馬周辺領域にある3種類の神経細胞の活動を調べ、成長するに従って空間の認知の仕方がどのように変化していくのかを調べています。


これら3種類の神経細胞は、空間認知に関係する機能をもつと考えられているので、これらの神経細胞の機能や成熟度合いを調べることで、ラットが成長する過程でどのように空間認知の能力を得ていくのかが分かる、というわけなのです。


 


 


それでは、皆さんに宿題です!


 


以下の3種類の細胞はそれぞれどのような働きをしているのか、これまでに分かっていることについてインターネットや本などを使って調べてみてください。


 


場所細胞 (Place cells)


方向細胞 (head-direction cells)


グリッド細胞 (grid cells)


 


 


 


来週は、これらの神経細胞がラットの成長過程でどのような変化が観察されたのか、空間認知はどのように発達するのかについて、論文から読み取っていきましょう!


私たちも、アクロバット飛行をするパイロットになれるのでしょうか?


 


それでは、続きはまた来週!

子孫を残すためにトカゲは進化する!?


こんにちは!りょうこ博士です。


かがくじゃーなるくらぶ、今週も始めます!


部員の皆さん、世界最先端で最新の面白い論文を一緒に読んでみましょう。


 


今回選んだ論文は、『Nature』の6月3日号に掲載された論文です。


 


さて今週の論文は、


 


タイトル: Experimentally assessing the relative importance of predation and competition as agents of selection


(選択の作用因子としての捕食と競争の相対的な重要性の実験的評価)


 


著者: Ryan Calsbeek & Robert M. Cox


 


概要: Field experiments that measure natural selection in response to manipulations of the selective regime are extremely rare, even in systems where the ecological basis of adaptation has been studied extensively. The adaptive radiation of Caribbean Anolis lizards has been studied for decades, leading to precise predictions about the influence of alternative agents of selection in the wild. Here we present experimental evidence for the relative importance of two putative agents of selection in shaping the adaptive landscape for a classic island radiation. We manipulated whole-island populations of the brown anole lizard, Anolis sagrei, to measure the relative importance of predation versus competition as agents of natural selection. We excluded or included bird and snake predators across six islands that ranged from low to high population densities of lizards, then measured subsequent differences in behaviour and natural selection in each population. Predators altered the lizards’ perching behaviour and increased mortality, but predation treatments did not alter selection on phenotypic traits. By contrast, experimentally increasing population density dramatically increased the strength of viability selection favouring large body size, long relative limb length and high running stamina. Our results from A. sagrei are consistent with the hypothesis that intraspecific competition is more important than predation in shaping the selective landscape for traits central to the adaptive radiation of Anolis ecomorphs.






 



 


私たちは、大人になるとたいてい140~190cmの身長になりますが、どうしてそれ以上でもそれ以下でもないのでしょうか?


同様に他の生物に関しても、同じことが言えます。


例えば大人のカラスはどうしてあの程度の大きさなのか、彼らのくちばしはどうしてあんなに大きいのか、どうして全身黒いのかなど、不思議に思ったことはありませんか?


 


 


今地球上にいる生物は、長い進化の過程でそれぞれの生物集団の形質が変化して、現在ある形質に落ち着いていると考えられます。


それでは生物はどのようにして形質を変化させるのでしょうか。例えばカラスで考えてみると、次のような3つの要素がある場合にカラスの形質が変化すると考えられます。


1.  カラスの集団の中の一部に、くちばしの大きいカラスや体の小さなカラス、羽が一部分だけ白いなど様々な違いを持った個体が生まれる


2.  羽が一部分だけ白いという変化は子供に遺伝する


3.  羽が一部分だけ白いということが、その時の周囲の環境や状況に好都合に働き、自分の生存確率が上がったり、子供をたくさん残せたりする


以上の要素が3つ揃った場合、生物集団としてのカラスの形質が変化して、カラスの羽は一部分だけ白くなると考えられます。(例えばの話ですよ!実際には一部白くなるという性質の変化はおこっていません。)


 


そして、この3つ目に関することですが、偶然におこる確率の範囲を超えて一部分だけ白い羽のカラスが集団の中に存在するようになった場合に、「自然選択が起こった」と言います。


 


さて今回の論文では、アノールトカゲを使って、自然選択を実験で検証しています。


 


著者たちは、もともとアノールトカゲの住んでいないカリブ海の6つの小さな島に、他の島で捕獲したアノールトカゲをそれぞれ40匹(または80匹)放し、ある島では鳥やヘビといった捕食者も一緒に放して、数か月後にアノールトカゲの体のサイズや足の長さを測定するという、まれにみる大規模な実験をしました。


 


アノールトカゲは、トカゲ同士の競争、そして天敵からの捕食というふたつの作用によって、体のサイズや肢の長さが変化することが正確に予測されている、非常にまれな生物です。


 


実験結果によると、このふたつの要因のうち、捕食者の有無よりも個体の密度が増大することのほうが、アノールトカゲの体のサイズはより大きくなり、足の長さも長くなることが分かったのです。


 


つまりアノールトカゲは、捕食者から食べられるのを回避するために体を変化させるよりも、自分の子孫を残すために、種内の競争に勝ち残る方法として体を大きくし戦いに強くなり、足を長くして速く走れるようになるほうを選択しやすいということです。


やはり、どの生き物も自分の子孫を残すことが最重要ってことですかね?


 


またこの論文は、自然選択という現象を実験によって観察することができるという事を実証した価値ある論文だと思います。


このような大規模な実験を行って結果を出すことは、並大抵のことではありません!


研究者たちの根気強さと熱意は、すごいですね。


 


今週は、進化の論文を選んでみましたが、いかがでしたか?


 


私達が現在の姿を獲得するまでの長い歴史を考えさせられる壮大な世界でしたね。


 


次回も、部員の皆さんが新しい世界に出会えるような論文を探して紹介したいと思います。


 


 


また来週。


りょうこ博士と一緒に、最新科学論文に出会いましょう!

子供は平等がお好き?


こんにちは!りょうこ博士です。


 


かがくじゃーなるくらぶ、今週も始めます!


部員の皆さん、世界最先端で最新の面白い論文を一緒に読んでみましょう。


 


第1回目は『Cell』、前回が『Nature Neuroscience』でしたので、第3回目の今回は、『Science』から紹介します。


『Scinece』は最も権威のあるアメリカの学術雑誌のひとつで、世界にインパクトを与える幅広い科学分野の研究成果が毎週掲載されています。


 


今回選んだ論文は、『Science』の5月28日号に掲載された論文です。


 


タイトル: Fairness and the Development of Inequality Acceptance


(平等主義と不平等を許容する心の発達)


 


著者:Ingvild Almås, Alexander W. Cappelen, Erik Ø. Sørensen, Bertil Tungodden


 


概要:Fairness considerations fundamentally affect human behavior, but our understanding of the nature and development of people’s fairness preferences is limited. The dictator game has beenthe standard experimental design for studying fairness preferences, but it only captures a situation where there is broad agreement that fairness requires equality. In real life, people oftendisagree on what is fair because they disagree on whether individual achievements, luck, and efficiency considerations of what maximizes total benefits can justify inequalities. We modified the dictator game to capture these features and studied how inequality acceptance develops in adolescence. We found that as children enter adolescence, they increasingly view inequalities reflecting differences in individual achievements, but not luck, as fair, whereas efficiencyconsiderations mainly play a role in late adolescence.


本文はこちら


 


想像してみてください。


あなたはジュニアサッカーチームに入っているとしましょう。


試合後、あなたは監督から呼び出されました。近所の方から差し入れをもらったのでチームの皆で食べなさいと、クッキーを渡されたとします。


あなたはチーム内でそのクッキーを分配する権利がありますが、どのようにして分配しますか?


やはりチーム内は平等であることが大事なので、チーム全員が等しくなるように分け合いたいと思いますか?それとも試合が終わったばかりだし、活躍した人には多く、活躍しなかった人には少なく渡しますか?


 


これは公平性の傾向を検討する標準的な心理学のテストを元に、私が場面設定してみました。


このようなテストのことを独裁者ゲーム (dictator game)といいます。


 


 


今回の論文では、ノルウェーの小学校高学年から高校生を対象に独裁者ゲームを行っています。


 


テストの結果は次のようでした。小学校5年生の場合は平等性を重視し、チーム内できちんと平等に分けました。ところが学年が上がるにつれて、平等ではなく個人の能力に応じて分配するようになるというのです。


つまり、心理的な発達に伴って、不平等な決定を受け入れるようになることが明らかになりました。


 


 


年齢が増すにつれ、スポーツ競技や定期試験に参加する機会が増えますよね。そうすると、個々の能力や成果の差が明らかになることが多くなります。


例えば、サッカーなどのスポーツでは、個々の活躍により勝敗が決まり、活躍した選手は周囲から「すごい!」「かっこいい!」など高い評価を得ることになります。


著者Almåsらは、このような成果主義の社会活動に触れることにより、小さな頃は「平等性」が重視されるものの、大きくなるにつれて、私たちは能力に応じて報酬を得るべきだという「公平性」を重視するようになると考察しています。


 


 


 


この研究はノルウェーで行われた実験ですが、日本で同じ実験を行った場合、どうなるのでしょう。 ノルウェーと同様の傾向がみられるかもしれませんが、日本人の方がより平等に分配する傾向が強いような気がします。


確かに能力の差はあるけど、ここでは平等に分けた方がいいのではないか、チーム全体として成し遂げた結果なのだから・・・などと、他人の目を気にしたり、全体を見まわしたりと様々な判断要素が入ってくるように思えます。


 


最近日本では、幼稚園で演劇に出演する子供全員が主役をするという極端な「平等性」もみられますから、もしかしたら他国に比べて平等であることを重要視する傾向があるのかもしれません。独裁者ゲームを使って、国民性による違いを調べる研究もあるようですので、今後の展開は非常に興味深いところですね。


 


今週は、心理学の論文を選んでみましたが、いかがでしたか?


実際に、あなたの隣の友人にこの独裁者ゲームを試してみたら、彼がどの程度平等主義なのかを垣間見れることが出来て面白いかもしれませんよ。


 


次回も、部員の皆さんが新しい世界に出会えるような論文を探して紹介したいと思います。


 


 


 


また来週。


 


りょうこ博士と一緒に、最新科学論文に出会いましょう!

毛包幹細胞が生きている限りはハゲません?


こんにちは!りょうこ博士です。


 


かがくじゃーなるくらぶ、今週も始めます!


部員の皆さん、世界最先端で最新の面白い論文を一緒に読んでみましょう。


 


 


今回は、Nature姉妹誌から選んでみました。


『Nature』という雑誌はサイエンス全般の論文が掲載されていますが、サイエンスの各分野に特化した雑誌もあります。それがNature姉妹誌です。


例えば、神経分野だったら『Nature Neuroscience』、物理分野だったら『Nature physics』があります。


 


選んだ論文は、『Nature Cell Biology』のホームページ上で5月16日に公開された論文です。


 


タイトル: Bcl-2 and accelerated DNA repair mediates resistance of hair follicle bulge stem cells to DNA-damage-induced cell death


(毛包幹細胞のDNAダメージによる細胞死への耐性化は、Bcl-2とDNA修復の促進により起こる)


著者: Panagiota A. Sotiropoulou, Aurélie Candi, Guilhem Mascré, Sarah De Clercq, Khalil Kass Youssef, Gaelle Lapouge, Ellen Dahl, Claudio Semeraro, Geertrui Denecker, Jean-Christophe Marine & Cédric Blanpain


概要:  Adult stem cells (SCs) are at high risk of accumulating deleterious mutations because they reside and self-renew in adult tissues for extended periods. Little is known about how adult SCs sense and respond to DNA damage within their natural niche. Here, using mouse epidermis as a model, we define the functional consequences and the molecular mechanisms by which adult SCs respond to DNA damage. We show that multipotent hair-follicle-bulge SCs have two important mechanisms for increasing their resistance to DNA-damage-induced cell death: higher expression of the anti-apoptotic gene Bcl-2 and transient stabilization of p53 after DNA damage in bulge SCs. The attenuated p53 activation is the consequence of a faster DNA repair activity, mediated by a higher non-homologous end joining (NHEJ) activity, induced by the key protein DNA-PK. Because NHEJ is an error-prone mechanism, this novel characteristic of adult SCs may have important implications in cancer development and ageing.


http://www.nature.com/ncb/journal/vaop/ncurrent/abs/ncb2059.html


 


 


 


いかがですか?


今回の論文は、hair-follicle-bulge stem cells(毛包のバルジという場所にある幹細胞)の研究成果が書かれてあります。


 


お風呂で髪を洗っているとき、髪の毛をくしで梳かすとき。毎日たくさんの髪の毛が抜けているのを、目にしますよね。このまま抜け続けていたら、髪の毛がなくなってしまうのではないかと心配になりますが、でもなかなかハゲたりしません。


実は、私達の『毛』は、ある程度の期間伸びると抜けてしまい、同じ毛穴から新しい毛が生えてきます。


毛穴の奥の毛根を包み込んでいる部分のことを毛包といいますが、ここは毛髪を支えたり新しい毛髪を生み出したりする大切な場所です。


この毛包の中のバルジ(膨らみという意味)という部分に、新しい毛髪の元になる細胞があります。この細胞のことをhair follicle bulge stem cells(毛包幹細胞)と言います。


 



 


Fig.1  Am J Pathol. 2009 March; 174(3): 715–721. Fig.1 より転載


B. 毛髪の毛包部分。赤の塊がバルジという部分で、ここに毛包幹細胞(stem cells)がある。


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2665733/


 


 


 


毛包幹細胞の周囲にある表皮の細胞などは、紫外線や化学刺激などの外界からの様々な刺激にさらされると、細胞に異常が生じて細胞が死んでしまいます。


しかし毛包幹細胞は、同じような刺激にさらされても死んでしまうことなく、再び新しい毛髪などを生み出していきます。


なぜ、毛包幹細胞は死んでしまわないのでしょうか?


 


今回の論文では、外界からの刺激を受けた毛包細胞が、死んでしまうことなく異常を素早く修復する方法を明らかにしました。


 


もう一度タイトルを見てください。


Bcl-2 and accelerated DNA repair mediates resistance of hair follicle bulge stem cells to DNA-damage-induced cell death


主語のふたつ(Bcl-2 と accelerated DNA repair)によって、毛包幹細胞が死なないようにするという意味のタイトルです。


 


日常的にはあまりないことですが、実験的に毛包幹細胞に紫外線や化学物質による刺激を与えると、Bcl-2というタンパク質が細胞の中で増え、もともと細胞が持っている自殺を促すプログラムの発動を止めます。それと同時に、毛包幹細胞の中では、細胞に起きた異常の治療(DNAの修復)が急速に行われることがわかりました。その結果、毛包幹細胞は異常化せずに、再び新しい毛髪を作り出すことができるのだと結論付けています。


 


毛包幹細胞には、大事な毛髪を常に作りだし続けるための、特別なしくみがあったのです。毎日たくさんの髪の毛が抜けてもハゲてしまわないのは、この毛包幹細胞の力強い生命力のお陰なんですね!なんだか、この小さな毛包幹細胞を応援したくなりました。


 


 


今週は、小さな細胞の世界をのぞきこめるような論文を選んでみましたが、いかがでしたか?


来週も、部員の皆さんが新しい世界に出会えるような論文を探して紹介したいと思います。


 


それでは、また来週。


りょうこ博士と一緒に、最新科学論文に出会いましょう!

仲間のフェロモン?敵のフェロモン?


第1回目の 今回は、生物学関連の一流の論文を掲載する雑誌『Cell』の5月14日号に掲載された論文です。



タイトル:   The Vomeronasal Organ Mediates Interspecies Defensive Behaviors through Detection of Protein Pheromone Homologs


著者:  Fabio Papes, Darren W. Logan, Lisa Stowers


概要:  


Potential predators emit uncharacterized chemosignals that warn receiving species of danger. Neurons that sense these stimuli remain unknown. Here we show that detection and processing of fear-evoking odors emitted from cat, rat, and snake require the function of sensory neurons in the vomeronasal organ. To investigate the molecular nature of the sensory cues emitted by predators, we isolated the salient ligands from two species using a combination of innate behavioral assays in naive receiving animals, calcium imaging, and c-Fos induction. Surprisingly, the defensive behavior-promoting activity released by other animals is encoded by species-specific ligands belonging to the major urinary protein (Mup) family, homologs of aggression-promoting mouse pheromones. We show that recombinant Mup proteins are sufficient to activate sensory neurons and initiate defensive behavior similarly to native odors. This co-option of existing sensory mechanisms provides a molecular solution to the difficult problem of evolving a variety of species-specific molecular detectors.


引用元はこちら


 


マウス がなぜネコを怖がるのか、みなさんは知っていますか?


宿題を忘れて先 生に怒られた時、遊んでいて階段から落ちそうになった時、その恐怖や驚きを記憶することで学習をし、ニ度と同じことにならないように行動しますよね。


ところが、マウ スがネコなどの捕食者に対し恐怖行動を起こすのは、学習によってではなく、生まれつき持つ能力であることが分かっています。「ネコに襲われる」という経験 から学ぶのではなく、生まれた時から「ネコを見たら逃げる」ことができるというのです。


しかし、いったいどんな物質が、そしてどのようにして恐怖行動を引き起こすのか、これまでほとんど分かっていませんでした。


 


Papesさん らはまず、ネコやヘビなどの捕食者から抽出した混合物をマウスに嗅がせ、マウスの逃げるような行動(恐怖行動)を観察しました。そして、混合物から単離し たMup (Major urinary protein; 尿に多く含まれるタンパク質という意)というタンパク質が、恐怖行動を引き起こしていることを突き止めました。


さらに、マウス の鼻の奥にある、フェロモンなどを感知する鋤鼻器(じょびき)の神経細胞が、このMupタンパク質を認識することも明らかにしました。マウスは、生まれた 時から捕食者の出すMupタンパク質を鋤鼻器で感知して、すぐさま逃げ出すことができるようになっているのです。



『Cell 』HPより転載

『Cell 』 HPより転載


青球はネコの Mupタンパク質を示しており、マウスがそれを鋤鼻器で感知している図 


 



ところでこのMupタンパク質、実は、ネコやヘビだけでなくマウス自身も持っているんです。


Mupタンパク 質はフェロモンの一種で、面白いことに、マウスのMupタンパク質を他のマウスに嗅がせると、恐怖行動ではなく攻撃行動を引き起こすのです。


ネコのMupタ ンパク質とマウスのMupタンパク質はアミノ酸配列や構造はとても良く似ているのですが、この小さな違いをマウスの神経細胞は識別して、全く異なる行動を 引き起こすということがわかってきました。同じフェロモンでも、マウス同士とマウスと捕食者とでは、違う役割を果たしていることになるのでしょう。


 




まだまだわからないことはたくさんありますが、どうやらフェロモンの感知とは、同性を誘因したり異性を攻撃したりするだけでなく、危険を回避するなどの様 々な情動を引き起こす大切な役割があるようですね。


大事なんです ね、フェロモン♪


 


さて、世界中の 科学雑誌の概要は、なんと無料で読むことができます。今回紹介した論文も、ぜひインターネットで検索してみてくださいね。(本文全体を読むには、有料であ る事が多いです)


雑誌Cellの HPはこちら




『Cell 』HPより転載

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